▲カリスマ馬券は、キングスボーツの公認を受けています。両者は社内でライバル関係で、敵対心が強く、毎週、熾烈な戦いをしています。ーカリスマ馬券編集部スタッフ-真田 幸太郎
マイルチャンピオンシップ 名馬列伝
『一人ぼっちのセリ市から。』
今から約30年前。ここにも、一人ぼっちでセリ市に取り残された女の子がいた。
父は凱旋門賞を制覇したトニービン。彼女にも王者としてのDNAが脈々と流れている中、初年度産駒について、馬産地では「華奢で頼りない。」という評判が立っており、彼女の内面には見向きもされず、一向に買い手が付かなかった。
人間という小さな生き物の浅はかさが伺い知れる。やむなく彼女は牧場が所有することになった。これが後のマイル界の女帝となる「ノースフライト」の生い立ちである。
健康的な馬ではあったが、育成のペースは一向に上がらず、この時点で陣営はノースフライトの競走能力に大きな期待は寄せておらず「まだ繁殖としては価値がある。」と繁殖牝馬としての道を模索していた。
周囲の焦りも同情できる。同期にはニ冠馬ベガ。砂の女王ホクトベガがいた。
輝かしい光を放つ彼女らはまるで日中の青空を悠々と飛び交う飛行機の様。名牝の話題になると必ず出てくる馬である。対してノースフライトは月光の下、僅かな光を頼りに闇夜を飛び交う飛行機のように、この手の話題に出てくることもなく、静かに時をやり過ごすしかなかった。
しかしチャンスは訪れる。
長い育成から4ヶ月。彼女は新潟マイルのターフに降り立ち2着馬に9馬身差をつけデビューウィンを飾る。4戦目で重賞に挑戦し、古馬相手に見事勝利。
その勢いでこの後重賞を3連勝し望んだ安田記念では、スキーパラダイスやサイエダティなど、世界の名だたるG1馬を完膚なきまでに一蹴。
引退レースとして望んだマイルチャンピオンシップでは、最後にして最速の敵。サクラバクシンオーが立ち塞がった。スピード対スピードの決着は、ノースフライトが執念のコースレコードで有終の美。
思いの丈がジェットエンジンに火をつけた1マイルだった。
太陽は嫉妬を抱かせるほどに眩しい。しかし闇にボンヤリと光る月の存在感も太陽に負けてはいないはずだ。僅か2年間の競争人生だったが、マイルの距離では5戦全勝。春秋マイルGⅠの完全制覇。
彼女が駆け抜けおよそ25年。
未だ彼女以外で春秋マイルGⅠを統一制覇した牝馬は一頭もいない。
まさしく彼女こそ、完全無欠なマイルの女帝。
(作:真田 幸太郎)
▼1994年 マイルチャンピオンシップ ノースフライト
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